私が小学校1年生の時に、母が統合失調症を発症し、続けて姉、兄も発症してしまいました。
私は、その時の辛い気持ちを誰にも話すことができず、誰にも気付かれないように隠し、1人で頑張ってきました。そして家族のことを誰にも話せずに、ずっと作られた家族像を話していました。
その頃は、隠すこと、嘘をつくことでで【生きづらさ】を感じていたと思います。自分の将来のことを考えると不安が襲ってきて「自分は何のために生きているのか?家族のケアをするために生まれてきたのか?自分の人生なんてどうなってもいい」などと考え心が悲鳴をあげていたと思います。いつも、自分の希望を最優先できず、自分のことを後回しにしながら生きることで空虚感を感じていました。それでも、みんなの前では弱さを抱えながらも強いふりをして無理して過ごしていました。
そんな矢先に、両親が認知症になり、初めて他の人に家族のことを話すことができました。その時「今まで何で隠してきたのだろう?こんなにも暖かい人達が話を聞いて助けてくれるのに。きっと医療や福祉ではない、人との繋がりこそが必要なんだ」と気付きました。今まで抱えてきた辛い気持ちを、周りのみんなが少しずつ持ってくれた、そんな感じがしました。そして、そんな素敵な仲間がいる場所を作りたいと思い、兄弟姉妹会ケセラセラやリカバリーカレッジの活動を始めました。兄弟姉妹会では、同じ立場の方が集まりました。話を聞いて、共感し、自分の想いと同じだ、と感じながら聞いていました。けれど、いざ自分の話をしようと思っても、長年家族の話をしていなかったので、家族に対する自分の気持ちが上手く話せませんでした。それでも仲間と繰り返し会話を行うことで、自分の気持ちに気付くことができ、気持ちの整理ができるようになっていきました。そして自分の想いうお吐き出すこともできるようになりました。自分の気持ちを吐き出すことができた時に気持ちに変化が起こりました。自分の経験を、他の辛い想いをしている人達の力になりたいと想うようになり、兄弟姉妹会ケセラセラを作りました。その後、家族会や兄弟会に参加したり、仕事で当事者の方と話をする中で、それぞれ立場が違っても、共通の苦悩や葛藤を抱えている7と感じるようになりました。そして、それぞれが自分の苦労の専門家なんだと気付くようになりました。もし、あの時に病気にならなければ、きっと違う人生だったのではと想いながら後悔や葛藤して生きていることに気付きました。そこで、それぞれの想いに寄り添いながら、お互いに対話して、協力できたら、きっと変化が起こるのでは、と感じました。さらに専門職や地域の人達に力を借りることができたら・・・と考えたらわくわくしてきました。そうやってできたのが【リカバリーカレッジあんなか】です。リカバリーカレッジをやっていると、人は苦しみを理解すると会話が変わってくる、優しくなれるんだと改めて感じています。気持ちの揺れを否定せず一緒に揺れながら話を聴いてくれる仲間、そして安心できる居場所や逃げ場が必要だと感じています。また、必要な社会資源を利用しながら、心の支えになる仲間や場所が必要だと思います。自分はリカバリーカレッジあんなかを学びだけではなく、そんな場所にしていきたいです。

<あんなか兄弟姉妹会ケセラセラ>精神障碍者を兄弟に持つ人たちのピアサポートの場として2017年に3名の仲間から始まりました。活動を重ねる中で、きょうだい同士で悩みを語り合うだけでは悩みの根源にある社会の偏見や差別はなくならない、自分やきょうだいの生きづらさも解消されないと考え、2019年から「リカバリーカレッジあんなか」の取り組みを始めました。「リカバリーカレッジあんなか」ではそれぞれの生きづらさの経験や想いを大切にします。そして障碍を否定しなくそうとするのではなく、障碍を受容し共にありながら、自分らしく希望を持って生きていくことを目指し、そのための知恵を学び合います。私たちは、安心して人とつながれる居場所を提供すると共に、そこで様々な立場の人が対等に学び合うことで、社会の偏見や差別をなくし、障碍当事者やその家族が豊かに暮らせる地域を作りたいと考えています。
※リカバリーとは病が治ることや、元通りの状態に戻ることを目指すのではなく、一人ひとりが自分らしい生き方を見つけ、人生の意味を見出していく過程です。